しない経営×エクセル経営とは




ワークマン式「しない経営」 4000億円の空白市場を切り拓いた秘密

土屋哲雄 著 / ダイヤモンド社

2020年10月20日 初版



「高機能で低価格」というブランド戦略を貫き、10期連続最高益を更新中。そして、ついには国内店舗数であのユニクロを抜き、日経MJによる「2020ヒット商品番付(ファッション編)」でも「横綱」にランクインするなど、今、最も注目を集める急成長企業の一つワークマン(WORKMAN)。そんな急成長の仕掛け人こと、ワークマンの専務取締役 土屋哲雄氏の経営理論とノウハウがすべて詰め込まれたビジネス書、『ワークマン式「しない経営」 4000億円の空白市場を切り拓いた秘密 / 土屋哲雄 著』を私なりの視点でご紹介します。



私にとってのワークマンは、車で外出した際に郊外のロードサイドで店舗を見かける作業者向けウェア専門店という認識で、一度も入店したことのないものでした。(いや、いまだにない。)今回、ブランディング・マーケティングというキーワードからこの書籍をキッカケに接点ができたという感じです。

ワークマンのことを少し紹介しておくと、1980年に1号店をオープンした創業40年を迎えた作業者向けウェア専門店。コロナ禍においてアパレル企業が軒並み業績を落とす中、順調に収益を積み重ねています。2020年3月期は、チェーン全店売上(ワークマンとワークマンプラス885店舗)1220億円(前年同期比31.2%増)、営業利益192億円(同41.7%増)、経常利益207億円(同40.0%増)、純利益134億円(同36.3%増)となっている。2020年10月にオープンした次世代店舗「#ワークマン女子」1号店には約3時間の入店待ち行列ができたという、話題にも事欠かない企業です。






今回は、なぜコロナ禍でも業績が伸び続けているのか、その急成長の秘密と経営のノウハウを探ってみることにした。まず、キーワードとして抽出したのは、ブルーオーシャン市場の拡張戦略しない経営エクセル経営の3つ。



ブルーオーシャン市場の拡張(客層拡大)戦略:

ワークマンの理想は「普通の経営者を普通の社員が支えながら、市場で圧倒的に勝ち続けること」。そのためにワークマンにおけるマーケティングの役割は「競争しないで勝つしくみ」をつくることである。まさにブルーオシャン戦略を掲げているわけだが、ただ掲げれば誰でも達成できるといった簡単なものではない。希少なブルーオーシャン市場の開拓(拡張)に成功したからこそ業績が好調だということが言える。キーポイントは徹底的なSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)分析に他ならない。自社の強みを把握し、市場の細分化の検証を繰り返し、そして意外な隙間の発見に成功したのだ。データと向き合い、データで気付き、調査して、分析して、その結果をまたデータにして向き合う。ワークマンはこれを繰り返していく仮説検証型企業である。



しない経営:

やりたいことを明確にした捨てる経営。目標は増えるほど1つひとつの目標の価値が下がり、かける力も分散してしまう。何年かかっても本気で達成したいことだけをたった1つ目標にするべきで、経営者が目標をギュッと絞り同じことを3・4年言い続けると企業は変わる。これは中小企業ほど効果がある。



エクセル経営:

全社員参加型のデータ活用経営のことで、社員全員が経営に参画するチームづくりを継続している。社員データ研修は2012年以来8年間続けており、自分の頭で考える社員の育成を行う。前述のしない経営とエクセル経営はワークマンの企業風土改革の根幹を担う。



この他にも、製品を変えずに見せ方を変えて客層を変える、アンバサダーマーケティング戦略、2-6-2の法則の中下位8割を活性化する方法、両利きの経営、知の探索×知の深化、セロトニントランスポーター遺伝子、など興味が尽きない内容で、全編にわたり書かれていることを私的に要約してみると、分析力、編集力、セグメント力、機動力、継続力、ポジティブ思考力、といった6つの力がキーポイントになっていることが分かる。




2012年に土屋氏がワークマンに招かれた際、創業者である土屋嘉雄会長(当時)からは、開口一番「この会社では何もしなくていい」と言われたと書かれている。それから9年余りが経過したが、かなりのことを着実に実行し形にしてきた印象を受ける。さらに理論ではなく実体験からくるファクトとしてのノウハウが惜しみなく書かれているので、企業の経営者の方、マネージメント層の方には参考になることが多いのではないかと思います。もしご興味をもたれた方はご一読いただいて損はない一冊です。






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